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【小売DX事例】オンラインとオフラインの垣根を取り払う!~無印良品~

OMOとは

OMO とは「Online Merges with Offline」の略で、日本語に訳すと「オンラインとオフラインを融合する」という意味になります。OMO では、オンラインとオフラインの垣根は取り払われていて、オンラインとオフラインは全体としてひとつの顧客体験を実現しています

そして日本の小売業において、DX推進の先駆者である無印良品もいち早く積極的にOMOに取り組んでいます。今回の記事はその具体的な取り組みについて、紹介していきたいと思います。皆さんの参考になれば幸いです。

無印良品の紹介

家具、衣料品、雑貨、食品など非常に幅広いジャンルの商品を販売していて、シンプルなデザインやリーズナブルな価格、品質の良さで定評のある無印良品。無印の商品を使ったことがある人も多いのではないでしょうか。

無印良品は、「わけあって、安い。」をキャッチコピーに、従来の商品の規格からすると少し外れてしまうような商品の企画からスタートし、「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」の3つの視点を守りながら、実質本位の商品をつくり続け、現在では7,000品目を超える商品を展開するブランドです。

実は無印良品は小売業の中でも特に OMO に力を入れている企業の一つなんです。

今回は無印良品がどのような OMO 戦略をとっているのか、紹介していきたいと思います。

オンライン施策:革新的なポイントシステムと顧客タッチポイント~MUJI Passport~

読者の皆さんは「MUJI Passport」という無印良品公式アプリを使ったことがありますか?この MUJI Passport は実は顧客にとっても無印良品にとっても使いやすい」アプリなんです。

革新的なポイントシステム設計

小売業でのポイントシステムは、例えば、100円分商品を購入したら1ポイント獲得することができて、ポイントは1ポイント1円として商品の購入に使えるというようなシステムのものが多いです。しかし、このポイントシステムではどうしても店舗にとって財務負担が大きくなってしまいます

そこで無印良品では新たに「MUJI マイル」というポイントプログラムを導入しました。このマイルシステムは、店舗の財務負担を軽減しつつ顧客の来店意欲を大きく増大させる、まさに一石二鳥の革新的な施策です。

MUJI マイルとは無印良品の店舗やネットストアで買い物をしたり、口コミをしたりした際や、さらには店舗に来店しただけでマイルがたまり、一定程度のマイルがたまると1ポイント1円として買い物での支払いに使うことができる MUJI ショッピングポイントがプレゼントされるというシステムです。
これによって、顧客がマイルをためたとしても、ある程度までマイルをためないとポイントが付与されないため、店舗にとっての財務負担が通常のポイントシステムより軽減される仕組みになっています。

また、マイルをためるためには MUJI Passport アプリを毎回開かなければならないため、アプリの MAU (Monthly Active Users) 率が高く維持されたり、顧客は店舗がある駅を通っただけでもマイルをためることができるため、毎朝の出勤時などに「無印良品」を想起させるきっかけとなったりと様々な利点があり、このマイルシステムは緻密に考え抜かれたシステムなのだと思い知らされます。

そして、アプリの利用頻度が高まることは次にお話しする情報収集にも非常に役立っているのです。

 アプリというタッチポイントで顧客の把握と交流

MUJI Passport ができる以前は、無印良品は EC サイトでは顧客の購買や web 上での行動を把握することができていたが、実店舗においてはいわゆる会員カードのようなメンバーシップ制度などが存在しておらず、web 上で商品を購入した顧客が店舗ではどのような商品を購入しているのか、オンラインとオフラインを横断的に把握することができていませんでした

そのため、オンラインとオフラインを横断したファンとのコミュニケーション持続的な来店客数の増加マーケティング施策の可視化、の3つを目的として MUJI Passport を導入しました。

MUJI Passport では通販などの販促をすることよりも顧客の好みや行動を分析することに重点を置いています

店舗へのチェックインでマイルが顧客に付与されますが、どこの店舗で何時にチェックインされたかを知ることでその顧客の生活圏や生活リズムを推測することができ、それによって、会員にメッセージを送る最適なタイミングを把握したり顧客の属性や売り上げなどを分析して1つの商品から得られた情報を他の商品にも横展開したり新店舗の出店戦略の参考にしたりと様々な方面での活用をしています。

また、商品についてのリクエストを、無印良品の新商品や商品の新たな使い方のアイデアを投稿する掲示板である「IDEA PARK」に投稿してもマイルがたまる仕組みとなっており、顧客とのコミュニケーションを積極的に図っていくことで、商品についての不満や要望、新しい商品開発のアイディアなどを得ています。

MUJI Passport 成功の秘訣

MUJI Passport 成功の秘訣の一つ目は、「顧客を第一に考える」ことです。MUJI Passport は顧客にとっての使いやすさや顧客の購買体験の向上を第一に考えて設計されています

MUJI Passport は他社のポイントアプリとは違って、アプリをインストールすれば会員情報などを入力することなくすぐに使い始めることができ、レジ前でのゴタゴタを回避することができます。

また、1つのアプリ内でマイルの獲得や商品の在庫状況の確認、購入履歴の確認、オンラインショッピングなど非常に幅広いことをすることができます。さらには、まだ一部店舗しか対応しておりませんが、MUJI Passport Pay をインストールし連携すれば、支払いまで1つのアプリ内で完結することができ、これは顧客にとっての購買体験を大きく向上させています

また、MUJI Passport はその設計段階から組織の不安や不満を払拭するため、組織全体を巻き込んでプロジェクトが進められました。デジタル施策を導入することは、実店舗からしたら「オンラインに顧客を取られてしまうかもしれない」といった不安を生んでしまったり、経営層に対してデジタル施策の価値を理解してもらうのが難しかったりと組織全体の理解を得ることは困難でプロジェクトを進行するのが難しいかもしれません。

MUJI Passport のプロジェクトでは店舗の意見を取り入れたり、社内の理解を得たりするため、設計段階から多くの部署を巻き込んで行われました。その際に重要視されたのがプロジェクト初期段階の「デジタル施策によってどのような顧客価値を実現することができるのか」を明確にすることです。

とりあえず DX を進めよう、デジタル戦略をとってみよう、となりがちですが、それによって何をしたいのかという目的や理想といったことを明確にすることが重要なのです

オンライン施策:ファンを取り込む SNS 戦略

無印良品は「ムジラー」と呼ばれる根強いファンが多いことでも有名ですが、無印良品で行われているファンを取り逃さない、新たなファンを獲得するための斬新な施策が SNS 運用です。

無印良品の公式 SNS アカウントは、インスタグラムが282.5万人、Twitter が75.9万人と企業アカウントとしてはかなり多くのフォロワーを獲得しています。この章では無印良品がどのような SNS 運用施策を取っているかについて紹介したいと思います。

無印良品では、SNS においても顧客視点を大切にしていて、ユーザー自身が発見したり、創意工夫したりできる「余白」を残すコミュニケーション、言いすぎないことを心掛けています。ユーザーにとってのメリットを画像を用いて分かりやすく発信するというインスタグラムの「定石」を守りつつ、それだけでなく無印良品の世界観を守るため、最後まですべて言い切ってしまうということをせず、伝えたいことの抽象度を上げ、どんな思いがこもった商品なのか、どんな風に商品を使ってほしいのかを伝えるような工夫が施されています。

また、SNS ではオウンドメディアとは違い、顧客自身が発信者になることもできるという特徴を持っています。そのため、ユーザーが自ら発信したくなるように、情報を言いすぎないで、ユーザー自身に便利な使い方や商品の良さ、「ツッコミどころ」を見つけてもらえるようにしています。そして、それがユーザーとのコミュニケーションにつながり、商品開発へのヒントとなったり、顧客の主体的な商品への関わりが情報の拡散だけでなく購買意欲の増大にもつながったりしています。

オフライン施策:地域コミュニティを目指す出店戦略

無印良品では2030年に向けて、地域に密着して、良い商品と良いサービスを入手できる日常生活になくてはならない存在となり、また、地域で暮らす人々が良質な生活を送ることができるよう地域課題の解決や町づくりに貢献している、地域のコミュニティセンターのような存在になることを目標の一つに掲げています。

それを実現するために行われているいくつかの施策の中でも特徴的なものが、食品スーパー横への出店計画。すでに埼玉県の東武動物公園前や新潟県の野々市市などにスーパー隣接型の店舗をオープンしています。

一見すると、スーパー隣接型の店舗を出店することは、顧客の取り合いになってしまうと思われるかもしれません。しかしながら、スーパー隣接型の出店はむしろ来店頻度が高くなったり、特に食料品においての売り上げが増加したりと相乗効果を生んでいます

また、スーパー隣接型店舗では特に「個店経営」に力を入れていて、通常の店舗にはない取り組みを数多く行っています。東武動物公園駅前店での例をいくつか紹介します。「無印良品 東武動物公園駅前」ではシェアキッチン「みんなの台所」があり、飲食スペースや厨房を備えていて、飲食店営業や菓子製造のために貸し出しており、飲食店などの立ち上げを支援しています。また、「Open MUJI 学び舎」というのもあり、これは地域の情報発信やイベントの場として活用されています。近隣の大学生による展示会や東武動物公園の飼育員による子供向けのワークショップが開催されています。他にも目の前には約1200㎡もある「みんなの広場」があり、ラジオ体操や清掃活動の拠点にするほか、マルシェなどのイベント運営のサポートをするなどして地域活性化に貢献しています。

終わりに

さて、今回は無印良品のOMO取組みについて紹介しましたがいかがでしたか?

大企業だからこその施策や小売業だからこその施策もありましたが、それらに通ずる「顧客を第一に考える」、という信念は、企業の規模や業種にかかわらず参考にすることができるのではないでしょうか。デジタル化が進んでいるからこそ、様々なタッチポイントで顧客とインターアクティブに交流し、そしてファンになってもらいコミュニティを作り上げることが大事だと思います。

ぜひ無印良品の OMO 施策に関する取り組みや地域貢献に関する取り組みなど、参考にしてみてください!

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